タスマニアカキ産業会議(Shellfish Futures)について

Shellfish Futures 2009 (森 勝義 「タスマニアへの招待状― カキ養殖産業視察とIOS4開催協議 ―」 かき研究所ニュース25号より抜粋)

 この会議は、学術集会と言うよりは、カキ産業の現場に直接関係する人々の年会という性格のもので、「タスマニアのカキ産業が国際競争力を高めて自分たちの養殖現場の利益を上げるためには、どのような生産・マーケット戦略を採ればリスクを軽減し、新しい機会を産み出せるのか」について意見交換することを目的としている。
今回のメインテーマは"Growing with Collaboration"で、参加者は全部で70名程であった。タスマニア州に限らず、サウスオーストラリア州やニューサウスウェールズ州からの発表もあり、オーストラリアの主要なカキ養殖地が直面している課題が広く紹介された。
 先ず、オーストラリアのカキ養殖に従事する約500経営体にとって、今年は洪水被害や種苗生産不足で養殖がうまく行かず、試練の年となったことが強調された。洪水はタスマニア州のマガキ養殖だけでなく、ニュウサウスウエールズ州のシドニーイワガキ養殖にも大きな被害をもたらし、その対策として適切で効果的な河川管理が大きな課題になっている。さらに、タスマニア州の貝類種苗生産場ではバクテリアが原因で何百万という種苗が大量死した。これは具体的にはShellfish Culture Ltd のRichard が経験したものである。ニューサウスウェールズ州では、いわゆるQX病が継続的に発生しているために健全な親ガキが確保できず、採苗成績が不調である。
 また、同州のCalang Riverにおけるシドニーイワガキ養殖業者が受けたノロウイルス被害も深刻である。これらは沿岸の市街化と深く関係しているが、河川管理の不備から起こる問題でもある。
同時に、今年は、長年にわたって互いに差別化と競争を繰り返してきたカキ養殖業界を統合させるべきだという要求が表面化した年でもあった。洪水被害を防ぐ治水対策、疾病対策、選抜育種研究の推進、水質保全対策、あるいは国内の新市場開拓や海外への輸出の振興のいずれについても、各養殖場や各海域の団体が旧態依然として個別に対応していては効果が上がらない。それゆえ、これら地方レベルの小規模団体を州レベル、そしていずれは国レベルの団体へと統合し、前述のような諸課題に対して一体となって対処することにより、オーストラリアのカキ産業をさらに発展させようという趣旨である。すでに国の新プランも公表されており、それはカキ生産を今後5年間で1,650万から2,000万ダースへ増やし、消費を13%伸ばそうというものである。仮に持続的に毎年2,000万ダースの生産水準になれば、純益は10%、総生産額は毎年1億2,000万AUドルに達するという試算も発表された。そして、カキ産業に関する全国組織が結成されれば、養殖業者やその関係者へのサービスが向上し、オーストラリア全体のカキ産業の信頼性が高まるという説明であった。
 しかしながら、オーストラリアの有力な放送局のABC−TVが"Oysters Unity"とも呼んでいるこのような統合への動きは、必ずしもカキ養殖業者によって受け入れられているわけではない。組織が一本化されると、従来の団体から徴収されていた研究開発負担額が大幅に増える恐れがあるとか、自分の所では生産物の差別化すなわちブランド化こそが大きな利益を生んできたのに、統一されて単にオーストラリアガキとして国内外の市場に出しても何ら新しいメリットを生じないとか、いろいろな反論も出された。

 第4回国際かきシンポジウムの期間中の9月17日にはshellfish futures 2011が組み込まれています。我々日本人にとってもshellfish futuresという会議が極めて有意義であり、できるだけ多くの方がこの会議にも積極的に出席して、世界最先端を行くタスマニアのカキ産業に触れていただくよう希望いたします。




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